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スキルアップ

2022.06.24

高齢者のやる気を高める大切な3つの視点

 皆さんの周りにいる高齢者の中には、意欲的に暮らしている人と何だか生活意欲のない方がいませんか?
私たちのデイサービスに通われている方の中にも、ハツラツとしている方とつまらなさそうにしている方がいます。



私は、通所してくださっている方には、イキイキと暮らしてもらいたいなと思っています。そこで、デイサービスの運営をする上で持っている考えが、「3つの視点を持って関わること」です。


それは、①出来た ②関われた ③決められた の3つです。


何のこと?と思いますよね。
まず、人のモチベーションが高まるのには、2つのパターンがあります。


  • 人に言われたからやらざるを得ないパターン「嫌なことから逃げるため」
  • 人に言われなくてもやる気になるパターン「興味・関心があるからやる」

心理学では、前者を外的動機付け、後者を内的動機づけと言います。


前者は、例えば「お母さんに言われたから宿題をやる」「上司に怒られたくないからやる」のような場合です。瞬発的には、やる気が出ますが、長続きしないですよね。


後者は、「動物が好きだから、図書館に行って勉強しよう」というような場合で、やる気の源が自分の興味にあるような、場合で瞬発力はないですが長続きする特徴があります。


 まずは、簡単な外的動機付けから始め、内的動機付けを促していくのが良いと言われています。
しかし、高齢者がデイサービスの利用を開始する場合、外的動機付けから始まることが多いです。例を出すと、「閉じこもりにならないようにデイサービスに行く」「歩けなくならないようにリハビリをする」というような場合です。サービス導入時は、これでもいいのですが、このままでは内的動機付けが満たされずイキイキ過ごすことは難しくなります。


そこで大事になるのが、前述した①出来た ②関われた ③決められた の3つの視点です。
まとめると、「影響力を持てているかどうか?」の視点と言えます。



自己決定理論では、人間の3つの基本欲求、「有能さ」「関係性」「自律性」を満たすことで内的動機付けを高めることにつながると言われています。





特に「自律性」の欲求が重要だとされています。
高齢者は、仕事や子育てなどの親としての役割や町内会の役員や当番などの地域社会との関わりが少なくなってくることで、自分で3つの欲求を満たせなくなることが増えていきます。



私たちが取り組んでいるデイサービスという場所は、この課題を解決する力があると思っています。
そのために私たちが出来ることは、


  • デイサービスで本人の残存能力が発揮出来る作業や環境をアセスメントして提供することで「できた」を感じてもらう=「有能さ」
  • デイサービスで他の利用者や地域との架け橋となることで「関われた」を感じてもらう=「関係性」
  • デイサービスでる・やらない、何をやるのかを選択出来るようにすることで「決められた」を感じてもらう=「自律性」

私たちも小さい時こんな体験をしませんでしたか?例えば、最初はやらされていた書道教室。しかし少しずつ上手になっていったり(有能さ)、友人と一緒に学んだり(関係性)、好きな字や題材を描くことが許されたり(自律性)していくうちに、いつの間にか「やりがい」を感じていったように思います。


心理学と聞くと何だか難しそうに感じるかもしれませんが、おそらく皆さんも無意識に取り組んでいることもあると思います。
 例えば、ちょっと頑張ればできる目標設定をしてみたり、名前を呼んで挨拶したり、前回会った時の話題を出してみたり、飲み物を自分で選んでもらったり。私たちが日頃行っていることは、実は専門性に基づいていることが多いです。
まずは、簡単なことから始めてみませんか?

講師紹介

都内のデイサービス勤務(管理者)作業療法士10年目。埼玉県在住。
これまで回復期病院、脳神経外科、介護老人保健施設、訪問リハ、デイサービスに従事。その他、介護家族の会、地域リハビリテーション研修会の運営に携わる。

講演者 後藤 弘幸先生

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