デイ利用者の摂食嚥下障害と対応(準備期~口腔期)
前回の記事は【こちら!】
まずは『摂食嚥下の5期モデル』を復習しましょう!
【摂食嚥下の5期モデル】
先行期(認知期):飲食物を認識して口に取り込むまでの段階
準備期:口に取り込んだ食べ物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする段階
口腔期:噛み砕いた食べ物をのどへ送り込む段階
咽頭期:食べ物を飲み込み、咽頭へから食道へ送り込む段階
食道期:食べ物を食道から胃へ送り込む段階
この中から今回は、準備期~口腔期に起こりやすい摂食嚥下障害と、その対応に関してお伝えしていきます。
これらの段階は「食べ物が口からこぼれる」「咀嚼(食べ物を噛み砕くこと)が出来ない」「口の中に食べ物が残る、散らばる」「咀嚼し食べやすくしたものを飲み込むために舌でまとめられない(食塊形成)」「舌でまとめた食べ物を飲み込もうとするがのどに送り込めない」ことにより生じる、摂食嚥下障害です。
準備期・口腔期における摂食嚥下障害に対しては、機能訓練として発声発語器官の運動指導(嚥下体操など)や口腔ケアの介入が必要となります。また、状況に応じて歯科受診を勧めることもあります。
それでは準備期・口腔期に原因があるそれぞれの場面において、対応方法の一例を紹介していきます。
事例① 「口に入った食べ物をずっと噛んでいて飲み込まない、もしくは口から吐き出してしまう」
【対応方法】
まずは口腔内観察にて歯の状態を確認します。食べ物を噛み砕くことが可能な歯があるか・義歯(入れ歯)の場合は適合しているか、う蝕(むし歯)が無いか・歯茎が弱り出血等が無いか、口腔内に傷や明らかな病変が無いかなどを確認します。
これらの状況が確認されれば可能な限り歯科受診を勧めます。歯科受診が難しい場合には、食形態を柔らかいものに変更することが良いでしょう。
口腔状態は概ね良好であるが飲み込まない場合には先行期段階の原因に加え、舌・頬・口唇などの発声・発語器官の運動機能低下が考えられます。また口には取り込んだが食べ物ではないと認識し、口から吐き出してしまう先行期段階の原因も考える必要があります。
事例② 「口臭があり、口腔内に食物の残渣があり衛生保持ができていない」
【対応方法】
この場合もまずは、口腔内観察にて歯の状態を確認し歯科受診の勧めが必要であるか、口腔ケアの徹底により衛生保持可能かを判断します。さらにもう一歩踏み込んだ評価として、口腔ケアを実施しても口臭が強い場合は食道期段階の原因や内臓疾患の疑いも考えます。また、歯は磨けていても舌の汚れ(舌苔)が付着しており口臭の原因となっている場合もあります。舌・頬・口唇などの発声発語器官の運動機能低下から口腔内に食物残渣が溜まり易くなっていることも考える必要があります。
以上のような原因を探りつつ評価を行い、必要な対応を選択していきます。
事例③ 「食べ残しが多くなるなど食事摂取量が変わった」「以前に比べ摂食のペースが変わった」「偏食となった」
【対応方法】
これらの場合もまずは口腔内観察による歯の状態確認を行います。口腔状態により硬いものや繊維質なものは、噛み砕くことが難しく食べづらい状態である可能性があります。
食事摂取量が減り体重減少が著しい場合は身体に何らかの変化が起きていたり、病変のサインであることも多いため、主治医への報告も必要でしょう。
摂取量や摂取ペースに変化が出てきている場合は、先行期の問題や、認知機能の低下による摂食・満腹中枢の異常も原因として考えます。その場合には、今まで嫌いで食べなかったものを気にせずに食べたり、好きだったものを食べなくなることや、かなり味の濃いものや甘いものを好むようになることも症状として呈します。
今回は、準備期~口腔期での摂食嚥下障害について、事例を通して対応を紹介しました。
次回、咽頭期~食道期段階での原因が関与している事例に関しても紹介したいと思います。
ジャンルが様々で気軽に参加できる【デイモットのセミナー情報】
現場目線に特化した話が沢山聞ける【デイモットのイベント情報】
この記事へのコメントはありません。