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- - 「自分のままでいられる場所」をつくる。脳フェス小林さんが灯す、誰かの一歩

インタビュー

2026.06.13

「自分のままでいられる場所」をつくる。脳フェス小林さんが灯す、誰かの一歩

「自分のままでいられる場所」をつくる。脳フェス小林さんが灯す、誰かの一歩
「自分のままでいられる場所」をつくる。|Daymotto Interview
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脳フェス小林さんのインタビュー写真
Daymotto Interview

「自分のままで
いられる場所」をつくる。

脳フェス小林さんが灯す、
誰かの一歩

自分のままでいられるから、ここに来ている

脳フェスを初めて見たとき、まず驚いたのは、会場の中ではなく、駅から会場へ向かう道のりでした。

杖をついた方、装具をつけた方、車椅子の方、家族と一緒に歩く方。普段の街中では少数派になりやすい人たちが、同じ方向へ自然に集まっていく。

「届けたい人に、本当に届いているイベントってこういうことなんだ」そう感じました。

その景色には、脳フェスが大切にしてきたものが詰まっているように感じました。今回は、小林さんの言葉を通して、「自分のままでいられる場所」がどのように生まれてきたのかをたどります。

Interview

小林さん
一般社団法人脳フェス実行委員会 代表理事/NPO法人ぼこでこ 代表理事。脳卒中当事者であり、理学療法士としての視点も持ちながら、当事者・家族・専門職・地域が混ざり合う場づくりに取り組んでいる。

脳フェス公式サイト

01

「気持ち悪さ」から始まった脳フェス

脳フェスを始めたきっかけについて、小林さんは「最初は、気持ち悪かったんですよね」と話します。

小林さん自身、脳卒中を経験し、その後、理学療法士になりました。障害を“弱さ”ではなく、“強み”に変えたい。そんな思いを持って医療の世界に戻ったとき、そこで見えた景色は、想像していたものとは少し違っていたといいます。

患者と医療者のあいだにある隔たり。どちらも本音を言い切れていないような空気。そして、どこか医療者の方が上にいるように感じられる関係性。

その違和感から、小林さんは「もっとフラットに関われる場所が必要なのではないか」と考えます。その先に生まれたのが、脳卒中フェスティバルでした。

脳フェスのイベント風景
脳フェスの空気を伝える写真
02

“脳卒中”と“フェスティバル”を掛け合わせる

「脳卒中」という言葉には、どうしても重たさや暗さがあります。小林さんは、そこにあえて真逆の言葉を掛け合わせました。

フェスティバル。楽しい場所。人が集まる場所。音や熱気があり、誰かと出会える場所。

「脳卒中という言葉って暗いじゃないですか。じゃあ、その対義語のような言葉をくっつけたら、何か面白いことが起こるんじゃないかと思ったんです」

病気や障害を隠すのではなく、真正面から扱いながらも、そこに明るさや楽しさを掛け合わせる。それは、単なるイベント名ではなく、小林さんがつくりたい世界そのものを表す言葉だったのかもしれません。

障害と健常のあいだが、
グラデーションになることを目指しています
03

届けたい人に、本当に届いている景色

現在、脳フェスの印象的な開催場所の一つが、錦糸町のマルイです。

会場の中だけではなく、駅から会場へ向かう道のりにも、脳フェスらしい景色が生まれています。

杖をついた人。装具をつけた人。車椅子の人。家族と一緒に歩く人。専門職として参加する人。普段の街中では少数派になりやすい人たちが、同じ方向へ向かって歩いていく。

「錦糸町駅からマルイに向かう途中、杖の人や装具の人が同じ方向に向かっているんですよね。あれは嬉しいです」

「あ、自分だけじゃない」「ここに行ってもいいんだ」。そんな感覚が、自然に生まれる場所になっているのだと思います。

脳フェス・会場風景
会場・イベント風景
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自分のままでいられる場所

小林さんが活動の中で大事にしていること。それは「素のままでいること」だといいます。

「嘘をつかないことですかね。自分の感情にもそうだし、約束に対してもそうです」

無理に取り繕わない。必要以上に飾らない。自分の感情にも、相手にも、できるだけ正直でいる。その自然体の姿勢は、脳フェス全体の空気にも表れています。

以前、車椅子ユーザーでジェンダーに関する背景を持つ方から、こんな言葉をもらったそうです。

「自分のままでいられるから、ここに来ているんだよね」

「受け入れてますよ」と言われないことで、受け入れられていると感じる。特別扱いしすぎるわけでもなく、無関心でもない。友達と一緒に過ごすときのように、自然に関わる。その空気こそが、脳フェスの一番大切な魅力なのだと思います。

混ざる

当事者・家族・専門職・地域が、自然に同じ場にいる。

決めつけない

障害があるから、車椅子だから、と相手を固定しない。

楽しむ

支援する・されるだけではなく、一緒に楽しみ、一緒につくる。

05

トラブルも含めて、場づくりは面白い

イベントを続けていれば、当然トラブルも起こります。機材が届かない。モニターが割れている。出演者との調整が直前で変わる。天候に左右される。想定外の相談や対応が発生する。

小林さんも、これまでさまざまなアクシデントを経験してきました。ただ、今はその受け止め方が少し変わってきたといいます。

「最初の頃は、けっこう食らっていました。でも、今はどうにかなるよねって思えるようになってきました」

事前準備をしっかり行い、想定できることはできる限り潰しておく。そのうえで起きることは、もう想定外のこと。

「当日は忙しいし、バタバタするし、いろんなことが起こるんですけど、ベースは楽しいんです。トラブルが出ても、『じゃあ、これどうしたらいいかな』って考えるのが楽しい」

脳フェス・準備風景
イベントの熱量を伝える素材
06

3年後に1万人。その火を遠くまで届ける

小林さんは、今後の目標として「3年後に1万人規模」を掲げています。

ただ、小林さんが見ているのは、単なる動員数ではありません。

「中心の火が強く燃えていれば、遠くの方からもその火が見えると思うんです」

脳卒中当事者の中には、退院後も外に出づらくなってしまう人がいます。運動が可能と言われていても、実際には閉じこもってしまう人も少なくありません。

だからこそ、まずは中心で強い熱量を生む。そこに集まる人たちが楽しそうにしている。自分のままで笑っている。誰かと出会い、新しい一歩を踏み出している。

その景色が遠くまで届けば、まだ外に出られていない誰かにも届くかもしれない。脳フェスが目指しているのは、イベントを大きくすることそのものではなく、その火を遠くまで届けることなのだと思います。

中心の火が強く燃えていれば、
遠くの方からも見える
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Web上のサードプレイス「KNCK」へ

今後の展開として、小林さんは「KNCK」というWebサービスの構想も進めています。

これは、脳卒中当事者や家族、専門職がフラットにつながれる、オンライン上のサードプレイスのようなものです。

退院した後、不安を抱える人がいる。外に出たいけれど、一歩を踏み出せない人がいる。自分と同じような経験をした人と出会いたい人がいる。専門職と、もっとフラットにつながりたい人がいる。

「退院したタイミングや、障害福祉課に相談に行ったタイミングで、こういう場所がありますよと渡せる選択肢があるといいなと思っています」

オンラインで出会い、リアルイベントで会う。「あの人が行くなら、自分も行ってみよう」と思える。そんな流れが生まれれば、脳フェスはイベントの枠を超えて、日常の中にある居場所になっていくはずです。

P

プロフィール

小林さん

一般社団法人脳フェス実行委員会 代表理事。NPO法人ぼこでこ 代表理事。脳卒中当事者としての経験と、理学療法士としての臨床経験をもとに、当事者・家族の伴走と社会参加支援に取り組んでいる。

  • 2005年ボクシング練習中の脳梗塞を契機に長期リハビリへ。以後、当事者・家族の伴走と社会参加支援を志す。
  • 2013–2025年旭神経内科リハビリテーション病院 理学療法士。脳神経疾患のリハ、家族会運営、院内研修の企画・実施に従事。
  • 2018年–現在一般社団法人脳フェス実行委員会 代表理事。脳卒中当事者向けイベント・講演・DEIプロジェクトを主宰し、全国規模の参加型イベントを展開。
  • 主な実績累計参加者数1万人のイベント運営、年間講演10〜30回、クラウドファンディング累計100万円超、インクルーシブ映画の上映・メディア露出等。
  • 2023年–現在NPO法人ぼこでこ 代表理事。全ての挫折が強みに変わるお手伝いをしている。
小林さんプロフィール写真
小林さんプロフィール写真
写真
差替

編集後記

小林さんのお話を伺いながら、何度も浮かんだのは「場づくりは、人が人と出会い直すきっかけをつくることなのかもしれない」ということでした。

外に出るきっかけ。誰かと出会うきっかけ。自分のままでいていいと思えるきっかけ。脳フェスには、その一つひとつが自然に生まれる空気がありました。

誰かを無理に変えるのではなく、その人がその人のままでいられる場所をつくる。その場所があることで、昨日まで踏み出せなかった一歩が、少しだけ前に進む。

脳フェスの中心にある火は、これからも多くの人の一歩を照らしていくはずです。デイモットも、その熱を受け取りながら、介護・医療・福祉・ヘルスケアに関わる人たちが明日少し前に進めるような場を広げていきたいと思います。

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